肥満というと、へそ周りが太くなる内臓脂肪型肥満であることに加えて、糖尿病、高血圧、脂質異常症のうちの2つ以上に当てはまるとメタボリックシンドロームといわれています。
その他に肥満が引き起こす病気は高尿酸血症と進行して起こる痛風、心筋梗塞、非アルコール性脂肪性肝疾患、脳梗塞、月経異常・不妊、腎臓病、睡眠時無呼吸症候群、ひざ・股関節・背骨・手指などの関節の障害も、肥満が関係していることがわかっています。肥満の指標となるBMI(体格指数)が25以上であることに加えて、これらの病気が1つでもある場合、肥満として施術の対象となります。
〔BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)〕
BMI(体格指数)が25以上である場合、減量指導や肥満にともなう病気の治療を受ける必要があります。これらの病気は肥満が原因で起こりやすい病気ですが、減量することで改善させることが期待できます。
肥満は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の大きな要因であるだけでなく、がんのリスクを高めることもわかっています。食べ過ぎや運動不足によって、体内に余った糖を処理するために、大量のインスリンが分泌されます。このインスリンの過剰分泌が、がん細胞を増殖しやすくするといわれています。
太り過ぎはがん死亡リスクが高くなることがわかりました。ほかの病気の影響も考慮して、BMI(体重kg÷身長m÷身長m)が男性は21~27、女性は21~25の範囲内に、体重を維持しておくことが勧められています。
内臓脂肪がたまりすぎると、内臓脂肪を構成している脂肪細胞が炎症を起こします。そのため、脂肪細胞が、体の機能を調節するために分泌しているさまざまな生理活性物質のバランスが崩れてしまいます。内臓脂肪が増えると、血糖値を上げるTNF-α(アルファ)や血圧を上げるアンジオテンシノーゲンの分泌が過剰になり、血糖値や血圧を下げるアディポネクチンの分泌が減ります。
その結果、糖尿病や高血圧を起こしやすくなります。また、内臓脂肪が増えると、血液を固まりやすくして出血を防ぐPAI-1(パイワン)が過剰になり、血栓(血のかたまり)ができやすくなります。血栓が増えたり、糖尿病や高血圧によって血管の動脈硬化が進行すると、心臓や脳の血管が詰まって、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしやすくなります。
内臓脂肪が多いと、認知症につながりやすいこともわかってきています。内臓脂肪が多い人は動脈硬化が進行しやすく、それによって脳梗塞を起こし、脳血管性認知症を発症することがあります。それとは別に、アルツハイマー型認知症も発症しやすいと考えられています。
そのメカニズムはまだ明らかにはなっていないのですが、アメリカの調査では、適正体重(BMI18.5~25未満)の人たちに比べて、BMI30以上の肥満の人たちは脳血管性認知症の発症が5倍、アルツハイマー型認知症の発症が3.1倍でした。アメリカ人のBMI30以上は、日本人のBMI25以上に相当すると考えられています。